【第67回拡大月例会】「神山まるごと高専 教育 × 経営 = これからの教育」開催レポート
教育を「起業」する——神山から未来を生み出す挑戦
2025年12月12日(金)、第67回拡大月例会は「神山まるごと高専 ― 教育 × 経営 = これからの教育」をテーマに、神山まるごと高専さまと株式会社メディアドゥの協賛にて特別講演とパネルディスカッションを開催しました。
当日は現地201名、オンライン53名の【254名】の方にご参加いただき大変盛会となりました。
登壇したのは、神山まるごと高専 理事長であり、Sansan株式会社 代表取締役社長 CEO/CPOの寺田親弘氏、神山まるごと高専 校長 五十棲浩二氏。
さらに、パネルディスカッションでは、同校のクリエイティブディレクター 村山海優氏が加わり、開校3年目を迎えた神山まるごと高専の現在地と未来について語りました。
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【講演① 寺田親弘氏】
「学校づくりは、本当に大変です。正直、会社を上場する方がよほど楽でした。」
売上や利益といった指標が使えない世界で、学校をゼロから立ち上げたという寺田氏。当初は「起業家だから、やればできる」という思いで学校づくりを始めたものの、神山町へ移住したスタッフや、協力してくれる関係者への責任の重さを実感するにつれ、次第に大きな重圧を感じるようになったといいます。
そのうえで、「日本で最も寄付を集めたのは僕だと思います」と語り、100億円規模の奨学基金構想を掲げて寄付集めに奔走した当時を紹介。また、学校を運営する人材集めについても、「思いついた人には片っ端から連絡する」「気づいたら犬にもお願いしていたんじゃないかというくらいの感覚」と笑いを交えながら語った寺田氏。数々の試行錯誤と苦労を、当時の映像とともに振り返りました。
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【講演② 五十棲浩二氏】
「いろいろな人の思いを背負っている。バトンの重さを感じています。」
聖光学院中学校・高等学校の校長補佐、経済産業省 教育産業室長などを経て、2024年9月に校長に就任した五十棲氏。2代目校長として学校運営の先頭に立つ現在の心境を、率直な言葉で語りました。
開校3年目を迎える神山まるごと高専では、授業課題として町のコーヒーショップとコラボレーションするなど、地元・神山町と結びついた実践的な学びが進められています。一方で、2028年3月に第一期生の卒業を迎えることを見据え、卒業後のキャリアパスの設計が今後の大きな注目点であることにも言及しました。
「この5年間で、自分の人生を自分でデザインし、どの道にも進める。そんな学校にしていきたい」と語り、「神山から未来のシリコンバレーを生み出す」という目標に向けて、学校運営をともに推進する仲間を募りたいとアピールしました。

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【パネルディスカッション】
全国初 起業家育成の高専「神山まるごと高専」 これまでと、これから
寺田氏、五十棲氏、そして同校のクリエイティブディレクター・村山海優氏によるパネルディスカッションでは、TIB代表理事/株式会社メディアドゥ代表取締役社長 CEOの藤田恭嗣がモデレーターを務め、学校づくりの舞台裏や、神山まるごと高専が目指す未来について活発な議論が交わされました。
<パネリスト>
・神山まるごと高専 理事長/Sansan株式会社 代表取締役社長 寺田 親弘 氏
・神山まるごと高専 校長 五十棲 浩二 氏
・神山まるごと高専 クリエイティブディレクター 村山 海優 氏
<モデレーター>
・TIB 代表理事/株式会社メディアドゥ 代表取締役社長CEO 藤田 恭嗣
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神山の地で芽吹く「人間らしさ」
村山氏は、2020年ドバイ国際博覧会(ドバイ万博)日本館の展示・広報ディレクターとして従事した後、2022年に神山町へ移住。神山まるごと高専の創設に携わり、現在は同校のクリエイティブディレクターを務めています。
開校当時を振り返り、「あっという間だった」と語る村山氏は、その時間を「共感の雪だるまのように人が人を呼ぶ感覚があり、カオスだった」と表現しました。
一方で、学生たちの内面には大きな変化が起きているといいます。全国から集まった仲間たちの中で、「何者でもない自分」に気づく瞬間。日々学生と向き合う村山氏は、そうした揺れ動く心の側面にも触れてきました。
「キラキラしているイメージを持たれがちですが、実際は苦悩や人間臭さもある。同級生の成功を素直に喜べない自分に気づくこともあります」 だからこそ、オンラインではなく神山という場所で、顔の見える関係性の中で学ぶ意味があるのだと語りました。
「選択肢がある」ことの重み
寺田氏は、高専という教育設計そのものが持つ意味にも言及しました。
「高校は“大学に行くための期間”になりがちです。でも高専になると、選択肢が一気に広がる。悩みながら、自分で道を切り開く必要がある」
高専という枠組みに起業家育成を掛け合わせる。その設計自体が、学生に“自分で決める”ことを突きつけているのだと語ります。
愛と野心が、変化を生む
ディスカッションの終盤、村山氏は学生たちに繰り返し伝えている言葉を紹介しました。
「社会に対して、愛をもって見てみよう、と伝えています。愛があれば、アクションは必ず生まれる。そのときに、デザインの力が生きてくる」
また五十棲氏は、「自分の足で立ち、自分の人生を自分でコントロールすること」の重要性を強調しました。
そして藤田氏が投げかけた、「教育と社会の間にズレが生じているのではないか」という問いに対し、寺田氏はこう締めくくります。
「15歳から“学生”として扱われる。イノベーションや変化は、たった一人の野心から生まれる。その感覚を持ってほしい」
神山まるごと高専が育てようとしているのは、正解をなぞる人材ではなく、自ら問いを立て、迷いを抱えながらも行動し、社会に「コトを起こす」人材。
パネリストたちの言葉と情熱は、参加した経営者、教員、学生など、さまざまな立場の人々へと、共感の輪を広げていきました。



開催後のアンケートでは、満足度【97.7%】と非常に高い評価をいただき、※「10〜8」の回答率(10=大変満足)
・「村山氏の「愛」と設計の視点を持つことが大事という言葉にハッとさせられました。」
・「学校を新設することの困難さとそれを成功に導いた皆さまの努力に頭が下がります。自分自身も今後困難があっても諦めずに取り組めるようなテーマを持ちたいと感じました。」
・「人と違うことをすること、人がしないことをする大切さを再確認しました。素晴らしい時間をいただきありがとうございました。」
・「0から1を作り出すのは壮大ではなく、自分が変えてやるんだという意思と巻き込む力で変えることができるのだと実感しました。」
と数々のコメントが寄せられました。
本会を契機に、徳島の教育の未来がまた一歩、大きく変わることを願っています。
今後もTIB は地域の皆さまと一体となり、徳島の明るい未来のために活動を続けてまいります。
引き続きのご支援とご協力を心よりお願い申し上げます。
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[協賛]
神山まるごと高専 × 株式会社メディアドゥ



